カンボン・財産のロベスピエールといわれた平原派議員

カンボンがなぜ財産のロベスピエールといわれるのか、そこからフランス革命の本質と、ブルジョアジーのある部分の動向を知ることができる。今の日本でも、財務省、旧大蔵省を抜きにしては、政府を語ることはできない。政府の中の政府、エリート中のエリートだ。この頂点にカンボンがいた。しかも恐怖政治のさなかにである。ならばロベスピエールの子分であったのか。そうではない。独立していた。また派閥が違う。ロベスピエールはモンタニヤール、カンボンは平原派である。
平原派はあまりしゃべらない、うおさおする。日和見主義者、「蛙」とかるくみられているが、このカンボンは違う。よく発言する。しかも戦闘的に。そこで私はこの人物に着目し、50年以上前から調べてきた。
彼は南フランスの大商人の息子であり、父親と息子は文通をしていた。「明日、ロベスピエールか、私か、どちらかが死ぬでしょう」。これは、テルミドールの反革命の前日、息子が父親に送った手紙であった。当日、「名誉を傷つけられる前に、発言をしたい」といって、ロベスピエールに対して反論とした。これが国民公会の審議の流れを変えた。前日までは満場一致でロベスピエールに賛成、今度はロベスピエール逮捕の決議と流れが変わった。カンボンは金持ちの住宅街の若者を武装させて、護衛兵として連れてきた。こういうことは、カンボンがブルジョアジーの戦闘的な指導者であることを物語っている。何を巡ってロベスピエールと対立したのか。それは、亡命貴族財産を没収したことでできた国有財産を、無料で貧しい愛国者に与えるという法令に反対したからである。カンボンの意見は、国有財産は売られなければ財政問題の解決にならないというものであった。
しかし、ならばなぜ財産のロベスピエールといわれるのか。彼はまず、いわゆるジロンド派内閣のころ、デユムーリエ将軍と巨大政商になったデスパニャック僧正の不正取引、国庫略奪を告発した。この問題で、ダントンが調査のために派遣されたが、あいまいな結論になった。のちに、ダントンの収賄も疑われるようになった。この腐敗のために軍隊の士気が低下し、オーストリア軍に対する敗戦につながった。
やがて、国境が危なくなり、国家存亡の危機に直面すると、国民公会の財政委員会が財政問題の全権力を握ることになった。その議長がカンボンであった。公安委員かからは独立している。したがって、カンボンの上がない。財政問題に関しては独裁者ということになる。
カンボンは危機の際して、様々な手を打ってくる。その手段の多くがいわゆるジロンド派の反対に出会った。紙幣としてのアシニアの強制流通、貴金属との交換停止、違反者に対する罰則、累進強制公債(実質的な累進課税)などである。現在の日本からすると、まあそういうこともありうると思われるだろう。しかし当時これはとんでもないことだと思われた。そこで意見が分かれ、死闘になった。
国民公会では、平原派とモンタニヤールが賛成、いわゆるジロンド派が反対となった。議決だけなら問題がなかったが、ジロンド派は武力をかき集めて反抗を試みた。それに対する反発として、パリ市民の大群が国民公会を包囲して、ジロンド派議員の追放、逮捕を要求した。カンボンは、追放には反対した。意見を表明したからといって、追放するのでは、誰も意見を言わなくなってしまうというものであった。こうして、カンボンと平原派議員は、追放に抵抗し、最後に議員だけで強行突破しようとして、「砲手、砲につけ」という有名なアンリオーの号令に屈して引き返した。カンボンはこの復讐はいずれしてやるといったという。
カンボンは、政策としてはジロンド派の反対を押し切っている。しかし、ジロンド派の追放には体を張ってまで反対をした。したがって、モンタニヤールとも対立する。両派と対立して身が持つのかというと、両派合わせて約300人、平原派だけで400人、成り立つのである。これがわからなければならない。
ならば、いわゆるジロンド派とカンボンのような平原派との違いは何かということになる。一口で言うと、非常手段は絶対ダメだというブルジョアとやむを得ないだろうというブルジョアの相違ということになり、非常手段のもとでも儲けられるものは、賛成ということになる。軍需産業、軍隊への納入業者、など今でも考えられる。累進課税は、今の社会では当たり前で、それでも儲かるところもある。こう考えると、平原派が多数であることも理解できるであろう。つまり、恐怖政治の時代もブルジョアジーの権力の時代であった。
ただ一つ、カンボンは高額年金の切り捨てという政策を強行した。これで、高額年金の受給者の恨みを買った。これが財産のロベスピエールといわれる理由である。これはそこまでする必要があったのかどうかわからない。

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