世界各地の中間層の革命理論

中間層は、さまざまな革命理論を持って社会運動に参加する。時と条件、民族的多様性が違うので、その主義主張に入り込むと、特殊性ばかりで、一般化は不可能になる。しいて共通点を挙げようとすれば、上を削って、下を救い、ほぼ平等の楽園を作れないものかという淡い期待であろう。そこで、前近代社会においては、大土地所有の階級に対して、批判が出てくる。それを倒した後は、大商人、銀行家、大工業化、などの富豪の贅沢に対して批判を強める。ただし、貿易商人で命がけの冒険を克服して貴重な商品をもたらした場合は、住民全体の尊敬を受けるから、非難の対象にはなりにくい。
世界で目立つものといえば、民主主義全盛期の古代アテネ、中世のヴェネチア、ダンテ、ミケランジェロの時代のフィレンツエの一時期、中世ドイツの都市国家ニュールンベルグ(ワグナーの楽劇ニュールンベルグのマイスタージンガーの舞台)、カルヴァンによる宗教支配下のスイス・ジュネーヴ、フランス西部海岸都市国家のラ・ロシエル、オランダ独立戦争を始めたばかりのアムステルだムなどがあげられる。
日本では、初期の貿易都市堺であろうが、後期すなわち織田信長が接近してきたときには、一方に能登屋のような大商人がいて、千利休に対しては「小商いなどやってなはれ」といったというから、格差は広がっていたようである。同じく戦国時代、一向一揆が支配した越前では、「坊主を立てて、わがままを言いて」という言葉が残っているから、中間層の楽園になったのではないか。浄土真宗の寺は寺領を持たないから、大土地支配には関係がない。寺のことは信者の寄り合いで決めるから、キリスト教世界のカルヴァン派に似ている。
このカルヴァン派が市民革命を起こした国は、オランダとイギリスである。オランダでは、アムステルダムを中心とした狭い地域で独立政権を樹立し、そこでは東インド会社を中心とした貿易商人の指導権が実現した。しかし、周囲の湿地帯における軍事力、警察権については中間層に頼ることが必須条件になる。レンブラントの絵画、夜警に見る市民たちのプライドがそれである。フェルメールの絵画もそれを表現している。この国のこの
時代では、大商人と中間層の妥協が成立していたとみるべきだろう。
同じことはイギリスのピューリタン革命にもみられる。それはクロムウエル独裁のころになる。両者のぎりぎりの妥協点の上に彼が護民官・ロード・プロテクターとして軍事独裁政権を樹立した。しかし彼の死後、その成果は消えた。
似たような人物は、イタリアの統一運動で英雄とされるがリバルデイといえるだろう。日本人はあまり知らないが、ローマから南に下がると、この人が英雄とされ、ナポリの駅前にもがリバルデイ広場がある。若者が熱狂的に彼のことを語ってくれたことが、ひどく印象的であった。その時に思い出したのが、鹿児島のタクシーになったとき、運転手に「西郷さんに似てますね」、「イヤーサツマイモばかり食っているからでしょう」。「西郷さんは人気があるでしょう」、「それは絶対です。大久保さんはどうかは知れませんけれど」というような会話があったことを思い出した。
イタリアの若者も、がリバルデイから南イタリアを譲り受けた宰相カヴールのことを批判していた。何かよく似ていると思った。がリバルデイの政策について知るところは少ないが、巨悪を打倒しようとする正義感が強く、彼が立てば、数千人の若者がはせ参じ、強力な集団になった。用兵の妙も加わり、連戦連勝でナポリ王国を征服し、そこの支配者になるかと思われたところ、イタリア統一の大目的を理解して身を引き、サルデニア国王のもとイタリア王国が成立することを助けた。晩年は地中海の島に引退して、身を全うしたが、西郷さんも島に滞在していて、かえって見ると西南戦争に心ならずも巻き込まれたというから、両者共通点が多いような気がする。
21世紀に出てきた中間層の革命理論は、アメリカ発のバノン現象であった。2017トランプ大統領の出現に貢献して、一時は影の大統領といわれた。そのまま実権を握り続けるのかと思うと、そうではなく早々と政府から去った。本人は自分がレーニン主義者だといっている。ということは暴力革命も辞さないという意思表示である。よくこれがアメリカで通用するものだと思うが、強固な支持母体があるといわれている。
それが白人中間層だという。特に多いのが、さびた地帯(ラストベルト)といわれるかつての重工業地帯で働いていた白人労働者であるといわれる。今は収入が減り、失業者が多く、その子供にも将来の見込みがない。絶望で怒り狂っているらしい。この芽は、約40年前、日本車を叩き壊した運動に見ることができる。
この中間層は、かつての労働者階級で、本来は下層であったが、労働組合運動の成功で、生活水準が上がり、労働貴族となり、中間層になったものである。時と条件によって、中間層の在り方は変化する。それだけに、その行方は予測がつかない。

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