小林良彰(歴史学者東大卒)の西郷隆盛論 廃藩置県はアメリカ南北戦争に似ている。

1861年に始まり、1865年に終わったアメリカの南北戦争は、奴隷解放のための戦争だとか、連邦維持のための戦争だとか、見当違いな解釈がなされたままであった。私はこれが第二の市民革命であり、アメリカの市民革命はこれでもって終結すると主張している。アメリカにおいても、自国の歴史については世界史的な見方ができていないのである。
約100年前に独立を達成した時、合衆国連邦の規模でみると、それは市民革命であった。ニューヨークを中心とした貿易商人、銀行家、南部の大土地所有者(プランター)の連立政権のようなものであったが、各州の独立性が強いので、、中央政府も南部諸州の内政問題には、介入できなかった。
このような状況の下で、戦争の直前に経済恐慌が起きた。21世紀のリーマンショックのようなものである。商業資本、金融資本が大打撃を受けた。成長し始めた工業資本も需要激減に悩まされた。失業者は増加した。結成されたばかりの共和党は、保護貿易、自作農創設、大陸横断鉄道の建設を公約に掲げ、エイブラハム・リンカーン(リンカン)を大統領に押し出した。共和党政権は今まで存在しなかったものであり、足場にするのは、下から成長してきた産業資本と自作農民あるいは自作農民たらんとするものであった。というのは、西部において、これ以上奴隷州を拡大することに反対し、公有地に自作農民になろうとする希望者を送り込もうという、ホームステッド法を実施するつもりであったからである。大陸横断鉄道の建設は、巨大な公共事業であり、五大湖周辺の工業経営者に対して膨大な注文をもたらす。
南部諸州は反対した。アメリカ連合を結成して、独立国家を作った。この瞬間、南部諸州に古代ローマ帝国の再来というべき国家が成立した。前近代国家への逆戻りである。ここでは奴隷所有者である大農園主(プランター)が州権力を維持している。その頂点にプランターのジェファーソン・デーヴィスを大統領として擁立した。
この対立の構造が、廃藩置県の寸前の日本と似ている。中央政府ができたばかりのブルジョア国家、対立するものが、何百年の伝統を持つ前近代国家、この対立が、日本では無血革命で解消され、アメリカでは戦争で解決された。中心になる人を一人挙げよといわれると、西郷隆盛とリンカーンになるだろう。奴隷解放の問題を前面に出すと、議論の方向が狂ってしまうが、リンカーンは奴隷制に賛成はしなかったが、政治家としては、奴隷解放論を唱えることはなかった。合衆国連邦の維持を前面に出していたので、戦争が終わったときに解放宣言を出したのである。
南北戦争の成功で急激に成長したのが、北部産業資本家であり、アメリカの国力の基礎になった。それから50年後になると、鉄鋼生産は日本の100倍になった。今その地域は、「錆びた地帯」(ラスト・ベルト)といわれて、落ちぶれていく中間層、トランプ大統領の支持基盤になっている。

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