西郷隆盛と坂本龍馬・大村益次郎の決定的相違点は何か。

西郷隆盛が坂本龍馬・大村益次郎と全く違う考え方を持っている「あるテーマ」がそんざいする。それがやがて、西郷隆盛の辞任につながるものになるのであるが、ずばりこれだといえる人がいるだろうか。
それは「親兵」の創設についてである。幕府を倒した後で、すぐに天皇直属の軍隊を作る。その必要を予想していたかどうかである。しかし天皇直属といえば、公家集団がいるではないか。その上級は、京都御所の周辺に屋敷を構えていた。下級のものは、京都の小さな家、または地方の屋敷にいた。いずれも刀を持っている。この点を人々は誤解している。お公家さんは戦闘集団ではないだろう、こういう先入観である。今でいう「文官」だろうと思っている。しかし、腕っぷしはいまひとつであったかもしれぬが、刀を持つ権利があれば、それなりの能力が磨かれ、中には剣の名手も出てきた。
これが天皇直属の武装集団であった。その経済的基礎は、山城の国、現在の京都府、約10万石、の土地支配であった。つまり、調停、天皇もまた、大名、反首都と同じく封建支配者の一員であった。
討幕の後に作る親兵は、天皇直属ではあるが、この公家集団とは別のものであった。全国から若者を集め、近代的兵器で武装させ、天皇の命令の下、どこへでも行く。今までの公家集団ではできないことだ。しかしこの新式軍隊、だれが指揮するのか。ナポレオン皇帝ならば、ナポレオンが命令するだろう。しかし天皇がというわけにはいかない。それは誰もが分かったいる。ではだれか。作ったものだろう。坂本龍馬が作るとすれば、彼だろう。しかし暗殺された。次は大村益次郎であった。
長州藩の人とは言うが、正式の藩士ではない。医者の家系、村田蔵六という。医学のかたわら西洋の武器、戦術を本の知識で知った。それを応用して、到着したばかりの新式武器を使う長州藩の戦闘集団を率い、この戦略、戦術を成功させた。第二次長州征伐の、日本海側の戦闘であるが、連戦、連勝、幕府側の大軍を撃破した。
その功績を買われて、彰義隊討伐の総司令官となり、一日の戦闘で全滅させた。この時、西郷隆盛は、薩摩藩の軍団を率いるだけの立場で、いわば大隊長のようなもの、天皇の名で全体を動かした人は大村益次郎であった。その大村が「今の兵は一大隊に二大隊の監視をつけなければ何をしでかすかわからない」といった。つまり、各藩からの藩士たちを指揮しながら、この集団は「危険」だと思っている。将来消滅させるべきものを思っている。
その腹の底は、早く「直属の軍隊を別に作り」今の各藩の藩士たちの集団は消滅させるべきだというものであった。これが本心であったが、口に出すのは時期が早すぎた。攘夷派の志士に狙われ、襲撃され、傷が悪化して死んだ。
この二人の共通点といえば、正式の武士集団に足場がないことである。悪く言えば、「成り上がりもの」扱いで、家柄を基準にすると、まともな武士ではないという扱いになる。それだけに、武士集団から離れることが簡単にできたのである。天皇直属といえば、自分がトップに立つことができる。
二人が死んだ後、山形有朋がこの仕事を引き受けた。彼も足軽出身で、武士階級の最下層
であり、命令される側で、命令することはない。しかし、奇兵隊の指揮官になった。奇兵隊が、正規の長州藩士扱いではなかったから、その指揮官にはなれた。しかし、討幕が終わって長州に帰ると、また足軽に戻る。其れよりは新政府に残り新式軍隊の組織にかかわった方がよい。
同じことは、薩摩の側でも起こった。西郷隆盛の弟、西郷従道は山県の協力者になった。大山巌もそうであった。西郷隆盛の親戚の次男であった。つまり、次男が新政府の側につきやすい。長男は薩摩藩に残りやすい。これは当然で、次男は、ほとんど独立した権限を持っていなかったのである。「厄介」といわれて、兄の従者のようなものであった。だから武士集団を捨てて、新政府の側に立った。
こうした、兄と弟は分裂し、西南戦争で戦うことになる。長州では、正規の武士が山形有朋に深い恨みと軽蔑を示していた。
さて、この新政府は誰のための軍隊であったのか。それは新政府を支持して、指導権を握ったビジネスパーソンの集団であった。土地の上に立る集団は、武士階級であった。これを打倒した後には、商業、金融業、工業の上に立つものが指導権を握る。
はじめは、三井、島田、小野など三都の大商人、鴻池、住友などの金融業者、鉱山業者、などが指導権を握り、すぐに新興の企業家、岩崎(三菱)、安田、川崎、五代、などの勢力が加わる。
新時代の官僚、軍人はこれと結びついたのであった。思えば、坂本龍馬の生きざまはこの流れではなかったのか、物語でいえば、シンドバッド船長兼軍司令官ではないか。こういうところに、フランス革命との同一性を見ることができる。

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