大三十八条 入界宜緩

にゅうかいぎかん 入界宜緩 これほど難しい問題はない。界にはいる。よろしく緩やかなるべし。序盤から中盤にかけてのハイライトであり,一手の間違いで碁の運命が決まる。界とは敵の勢力圏であり、こちらが先に地を稼ぐと相手は外壁、厚み、勢力を張る。それが両翼に広がるところが界であり、捨て置けば巨大な領地になるところだ。ここにどう突入するか、深入りすればとられる。浅過ぎると、相手の地が大きくなりすぎる。もう一つ、取られなくても、攻め立てられて、生きた時には地合いで負けているという状態になる。これを避けながら相手の地を削減する、この入り方について、その心得として、「緩やかにやれ」というので、もっと俗な言葉で言えば「深入りはだめよ」というのである。それならば、言葉だけでよいかというと、そうではなくて、ことにあたって判断ことがむずかしい。木谷流隊う言葉があった。相手に囲うだけ囲わせて、ドカンと打ち込む。十分に囲わなければ入ってやらない。木谷実九段の戦い方であり、その弟子を通じて広がった。じつは、私がその弟子のひとりの影響を受けて、碁とはそういうものだと思っていた。これに加えて、桶狭間、源義経の伝説が頭に入っている。そうすると、敵の大領地を見ると、「何ほどのことやあらん。突っ込め」という進軍ラッパが聞こえてくるのだ。これで深入りして、ひどい目にあうが、時に成功する。あいてが怒るから成功する。「こんなことをされては、僕の地がなくなる」と口で言って、本気で取りに来た。私は逃げ回って、生きた瞬間に相手が投了した。こうした成功体験をもとに、なかなかやめられなかったが、五段程度のころに,木谷先生の棋譜を見て、先生も必ずしもいわゆる木谷流ではなかったのだと知って、考えを改めた。その頃から、勝率が上がってきたように思う。

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